ラット脂質代謝を改善する乳酸発酵豆乳の有効投与量

雑誌:日本食品科学工学会誌, 57(4), 175-179 (2010) 著者:原田智子, 田中麻貴, 都築公子, 菅原誠, 髙木尚紘, 福田滿

【要約】

これまでの研究において、豆乳を植物由来乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii SNC33株※1)で発酵させた乳酸発酵豆乳はラットの血中総コレステロール濃度低下や肝臓脂質蓄積の抑制など、脂質代謝を改善することを報告しました1)。そこで、本研究では、脂質代謝を改善するのに必要な乳酸発酵豆乳の有効投与量を明らかにすることを目的とし、乾燥乳酸発酵豆乳で基準飼料の一部を置換した飼料をラットに投与し、血中および肝臓脂質濃度等に及ぼす影響を調べました。25%を乾燥乳酸発酵豆乳で置換した飼料(大豆タンパク質10%置換に相当する飼料)を投与したラットにおいて、血中総コレステロール濃度は3週目に有意に低下しました。また、肝臓コレステロール濃度および肝臓トリグリセリド(中性脂肪)濃度も有意に低下しました。これらのことから、飼料中の大豆タンパク質10%に相当する25%乾燥乳酸発酵豆乳含有飼料の投与は、ラットにおいて効果的に脂質代謝を改善することが示唆されました。また、これよりも低い濃度でも投与濃度に応じて改善効果が現れることもわかりました。

1) 日本食品科学工学会誌, 54(8), 379-382 (2007)

【方法】

実験動物:7週齢Sprague-Dawley系ラット(雄)

1週間予備飼育した後、引き続き基準飼料を投与したコントロール群(n=6)、基準飼料の12.5%を乾燥乳酸発酵豆乳で置換した飼料を投与した12.5%乳酸発酵豆乳群(総タンパク質20%のうち大豆タンパク質5%置換に相当する飼料を投与した群、n=6)および25%を置換した飼料を投与した25%乳酸発酵豆乳群(大豆タンパク質10%置換に相当する飼料を投与した群、n=6)の3群に分け、5週間飼育しました。

乳酸発酵豆乳は、豆乳を植物由来乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii SNC33株)で15時間発酵させたものを凍結乾燥し、飼料に用いました。

【結果概要】

1.血中総コレステロール濃度が25%乳酸発酵豆乳群で低下しました

血中総コレステロール濃度が、25%乳酸発酵豆乳群で3週目にコントロール群と比較して有意に低下し、5週目には低下傾向を示しました(図1)。血中トリグリセリド(中性脂肪)濃度は、乳酸発酵豆乳投与群でコントロール群と比較して常に低下する傾向を維持したものの、有意差は認められませんでした。

図1 飼育期間中の血中総コレステロール濃度

2.肝臓コレステロール濃度および肝臓トリグリセリド濃度が25%乳酸発酵豆乳群で有意に低下しました

肝臓コレステロール濃度および肝臓トリグリセリド(中性脂肪)濃度がコントロール群と比較して両試験群で低下傾向を示し、25%乳酸発酵豆乳群で有意に低下しました(図2, 3)。

図2 5週間後の肝臓コレステロール濃度

図3 5週間後の肝臓トリグリセリド濃度

【結論】

25%を乾燥乳酸発酵豆乳で置換した飼料を投与したラットにおいて、血中総コレステロール濃度が3週目に有意に低下しました。また、肝臓コレステロール濃度および肝臓トリグリセリド濃度が有意に低下しました。これらのことから、飼料中の大豆タンパク質10%に相当する25%乾燥乳酸発酵豆乳含有飼料の投与は、ラットにおいて効果的に脂質代謝を改善することが示唆されました。また、これよりも低い濃度でも投与濃度に応じて改善効果が現れることもわかりました。

【解説】

※1 Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii SNC33株(4408株)

今回使用したLactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii SNC33株は、赤カブの葉を無塩で発酵した長野県木曽地方で生産・商品化されている伝統発酵漬物「すんき漬け」から分離した植物由来乳酸菌です。本菌株は、東京農業大学岡田早苗教授より分譲頂き、使用許諾契約のもと「豆乳グルト」や「豆乳飲料オレンジヨーグルト味」、「豆乳+カルシウム350」などの商品に使用しています。

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